『アイの歌声を聴かせて』感想:とにかく素晴らしい最高のミュージカル映画!
『アイの歌声を聴かせて』、素晴らしかったですね。今回は私が特に素晴らしいと感じた点を上げてこの作品を絶賛していきます。
もしこのページを開いたけれどまだ『アイの歌声を聴かせて』を見ていないという方は, この記事を閉じてすぐに劇場に見に行きましょう。記事内でネタバレを遠慮なくするからとかではなくてこの作品は劇場で見ることでその魅力が何倍にも増えるからです。
では, 今回は下記構成で『アイの歌声を聴かせて』(以降アイうた)の素晴らしさを解説していきます。
ミュージカルのお約束をやらずにミュージカルを成立させる技法
ミュージカルといえば, "登場人物が急に歌い出すことは普通"というお約束があります。アイうたではシオンがまさにそのミュージカルの登場人物のように振る舞いますが, これに対して周りは常識的におかしいとツッコみます。このお話の始まり時点では, 現実世界の私たちが持つ常識と同じものをシオンの周りのキャラは持っているわけですね。でも, お話が進みシオンが歌うことで人間関係などの問題を解決していくにしたがって, 周りのキャラも(鑑賞者である私たちも)歌うことの素晴らしさに気付いていきます。こうして, あえて段階を踏むことでお約束を使わずにミュージカルを成立させている, というのがアイうたの面白くて画期的で素晴らしいところの一つなわけですね。
それと上記は脚本的観点からのお約束でしたが, もう一つ言及しておきたいお約束があります。それはミュージカルパートで流れる演奏です。これもお約束としては急に歌い出すのに合わせて急に流れ出すものです。これがアイうたでは, シオンのハッキング能力によってスピーカーはもちろん音を鳴らせる機械なら何でも利用して演奏をします。 2021-11-16修正:シオンの対話能力によってスピーカーはもちろん音を鳴らせる機械なら何にでも手伝ってもらうことで演奏をします*1。これはシオンはAIという設定とそれを活かした演出で見ていてとても気持ちが良かったですね。
シオンを演じる土屋太鳳さんの歌声
アイうたを見る前まで私にとって土屋太鳳さんというと不勉強で申し訳なかったのですがアクションができる女優といったイメージしかありませんでした。しかしアイうたでシオンを演じる土屋さんの演技を見てこの人は半端ないな!と印象が大きく変わりました。
というのも, まず土屋さんはシオンとしては劇中で4曲のジャンルの異なる歌を歌い上げていたからです。私は音楽に詳しくないので雰囲気で表現しますが, 明るめだったり, しっとりめだったり, Jazzyでテンポが良かったり, そして本格的なミュージカル調だったり, そんな感じの曲のどれもを土屋さんは真っ直ぐな歌声で歌い上げられていたんですね。そして土屋さんの真っ直ぐな歌声が, アイうたの真っ直ぐなテーマともうマッチしまくりで本当に素晴らしかったです。
記事冒頭で未視聴の人を劇場に誘導したのも, この体験は劇場で味わうことで何倍も素晴らしいものになるからなんですよね。自宅よりはほぼ確実に音響が良いであろう劇場でこの音楽体験をせずにどうするのって話なので。いやもうこの話については劇場で聴いた人が共感してくれたらそれだけで私は嬉しいです。
特に柔道ミュージカルのシーン
公式のTwitterアカウントがその人気っぷりから先週末に限定公開していたシーンですね。私はこのシーンでの歌"Lead Your Partner"がアイうたの楽曲の中で一番好きです。理由としては演出と歌声の点から2つあります。
まず演出として, これまで純粋さと可愛さの権化だったシオンがここでガラッと蠱惑な表情と色気のある歌声を使ってセクシーに変わることですね。このギャップ! そりゃあもうサンダー(そして鑑賞者である私たちも)が惚れるのも無理はないわけです。そして歌声として, このシーンでの歌のキーが土屋太鳳さんの地声に近いことからかご本人のセクシーさがにじみ出ているような気もするからですね。Yes!
そして忘れちゃいけない劇伴
サントラでまとめて聞くと改めて実感するのですが劇伴も素晴らしいんですよ。今回はその中でも"フィール ザ ムーンライト"について少し書きます。
フィール ザ ムーンライト 〜愛の歌声を聴かせて〜、シオンが歌うことのすべての始まりともいえる作品のキー曲です。がしかし, 劇中ではフルで流れないんですよ。これが惜しいのなんのって! 歌手は咲妃みゆさんという元タカラジェンヌの方で, この方がこの歌にディズニー映画の主題歌として存在するのかと思うほどの凄みを与えています。そして劇中では流れていないであろう部分の歌詞はもろにこの作品を物語っています。つまりフルで聴かないともったいない歌なんですマジで。 まだフルを聴いていない人は是非サントラを購入して聴きましょう。必聴です必聴!
余談:サントラの30曲目"[RO:M]"の曲名について
洒落ていると思いませんか?
コンピュータ用語でROMといえばRead Only Memory - 読み出し専用記憶装置のことを言います。身近な例だと, このサントラのように"曲は再生できるけど書き込めない"CDはCD-ROMなどと言います。
で, この曲が流れる場面は, シオンがゴミ箱PCにバックアップしたサトミの思い出をサトミたちが見る場面なんですよね。シオンの本体はネットワーク上に逃げ出したプログラムなので, そういった記憶装置のことを指しているわけではありません。まあそもそもコロンで区切っている時点ではわかるわけですけれども。ここではつまり, シオンをシオン足らしめるサトミとのMemoryつまり記憶のことを言っているわけです。ROMのMemory部分に別の意味を掛けているわけですね。
一度は削除されそうになりながらも削除されず, 長い間シオンという身体を手に入れるまでは上書きすることもなく, 読み込み専用 - Read Only として保持し続けていたサトミとの思い出……と考えるともう堪らなくなってきませんか? 私はもうエモーいとしか言えなくなります。エモーい!
2022/03/12追記:ROMには他に日本でのネットスラングで Read Only "Member" というものがありました。掲示板などに書き込みをせず読むだけの人のことを言います。シオンも, ネットに逃げてからシオンという身体を手に入れるまでは, サトミと会話・コミュニケーションができませんでした。その期間のシオンはReadOnlyなMemberだったと言えます。もしかしたらそういった意味合いも込めてあるのかもしれません。
あとTwitterで興味深い考察ツイートがあったので紹介させていただきます。
#アイの歌声を聴かせて 劇伴の[RO:M]はいただいたご意見を総合すると以下のような意味が込められていそうなことがわかりました。ありがとうございます!
— しーな (@sikatanaisi) 2022年1月29日
・Read Only Memory
・[]が配列の添え字であることから記憶の断片
・国際音声記号で[RO:M]→ローム→roamとなりネットを放浪していたことを示唆 https://t.co/nuwMITlNDr
おわりに
『アイの歌声を聴かせて』は本当に素晴らしいです。私は2021年に入ってから劇場で7本の映画を見ました。アイうたは, 私が今年見たそれら映画の中で一番心を動かされましたし一番楽しい気持ちにしてくれた作品でした。私にとって今年一番面白かった映画はぶっちぎりでアイうたです。"80点"じゃないです。"ぶっちぎりの一番"で"殿堂入り"です。
そして実は私が, こうして上映中の作品についての感想をブログ記事に書くのは, 『君の名は。』以来なので実に5年振りです。それほどブログを書かない人間がこうして感想記事を書いたというこの事実, これはまさにこの作品がそうさせる程にエネルギー・元気を与えてくれる作品だという証拠だと私は思っています。
とまあこんな感じで褒めていると延々と続いて終わらないので, この作品を見た後に相応しい爽やかで元気になれるあの言葉で記事を締めせていただきます。
今日も♪ 元気で♪ 頑張るぞ♪ おーっ♪