【ガールズ&パンツァー 劇場版】感想:親切設計とは即ち戦車道である
ガールズ&パンツァー劇場版、面白かったです。
さて今回は「親切設計とは」というテーマでガルパン劇場版について感想を書いていきます。
まあ結論としては面白かったですねって着陸する予定です。
構成論:120分の起承転結劇
本作は綺麗な四幕構成つまり起承転結の形でした。
しかもほぼ30分で区切れます。
タイムテーブル
劇構成 | 経過時間(m.) | 内容 |
---|---|---|
起 | 30 | エキシビションの決着。 |
承 | 60 | 廃校決定。廃校取り消しを懸けた対戦決定。 |
転 | 90 | 大学選抜との対決。中ボス撃破。遊園地跡へ。 |
結 | 120 | 大学選抜との決着。エンドロールへ。 |
作品のつかみである序盤の「起」に戦闘シーン。
これからの展開のために伏線を貼る「承」に日常シーン。
決着へ向けて高めていく「転」に戦闘シーン。
そして決着の「結」までたっぷりと戦闘シーン。
全体としてみると、戦闘3で日常1なのですが、日常的なシーンは戦闘シーンでも息抜きのようにちょくちょく挿入されますし、第一、女の子が戦車戦をやってる時点でバランスは取れているってものです。
このように本作はとても綺麗な劇構成になっていて、二大要素である「戦車」も「女の子」もバランス良く配置されていました。
戦車戦を見たい人も、可愛い女の子たちがワキャワキャするのを見たい人も、両方とも楽しめるバランスの良い作品になっていた、というわけです。
構造論:それじゃあプロットは?
TV版とあまり変わらないです。良くも悪くも。
まず、ラスボスに魅力やドラマがありません。
TV版の全国大会決勝戦、黒森峰女学園戦と同じです。
一応ドラマという点に関しては西住みほとまほ、西住みほとアリスの関係があったわけですが、それ以外がないわけです。
さらに、構図までTV版と一緒です。
主人公側はラスボスを倒したら廃校が取り消される。
ラスボス側は主人公を倒しても名誉以外特にない。
つまり、良くも悪くもラスボスが単純な「倒すべき相手」としてそこに突っ立てるだけなんですよね、劇場版も。あくまでもTV版の延長線上でしかない、基本に忠実な作品だった。そういうわけです。
そしてお気づきの通り、この単純な対立構造は良い面も勿論あります。それは分かりやすさ。つまり親切設計です。
親切設計とは
構成においては綺麗な30分区切りの四幕構成。
構造においては単純なラスボスを作る対立構造。
時間が決まっていて明確な敵がいる。
そしてその敵はルールに則って戦えば倒すことができる。
つまり、その設計自体が劇中の戦車道と同じく「スポーツ」だったわけです。
だからこそ、観戦役である受け手側にとって勝敗つまりストーリーの結末は非常に分かりやすいものでした。構図で言えばスポーツ観戦と同じです。
その点において、ガルパン劇場版とは親切設計のお手本とも言えるでしょう。それこそ戦車道そのものと言ってもいい。
だからあえて言いましょう。
親切設計とは、戦車道であると。
補足:未視聴者でも楽しめる
あと、TV版やOVA版を見ていなくても楽しめるし、見ていたらなお一層楽しめる作りにもなっているように感じました。
ストーリーが本作単体でも完結できるように作られているのがその理由のひとつです。
まず、最初の3分でこれまでのあらすじがざっと説明されますが、劇場版のストーリーの根幹に関わる要素に関しては劇場版の作中でしっかりと語られます。
そして、既存の作品(TV版やOVA版)はオマージュ的な演出として使われる程度に控えられています。
これは西住姉妹のエピソードが良い例です。
TV版だとただの対立項だった姉妹ですが、劇場版には回想を交えなら実は仲が良かったんだよというエピソードが挿入されています。これは最終戦のコンビネーションの「伏線」として機能するわけですが、TV版を見た人はさらに、このエピソードに姉妹の関係の復活を見て感動することができる、というわけです。
視聴者層に考慮した作りをしているのもまた親切設計の表れだと思います。
さいごに
いずれにしても、ガルパン劇場版はとても面白かったです。劇場の大画面・大音量で感じる戦車戦の迫力はTV版では味わえないものでしたので。
そういうわけで、TV版を見た人も見てない人もおとなもこどももおねーさんも劇場で公開しているうちに是非是非見に行って下さい。
ポスターやらを見て抱いた期待。
それは裏切られないはずですよ。